個人情報を適切に扱うための心得。リスクと対策を解説

生徒の個人情報を含む内部資料の流出事故が発生し、大きな波紋を呼んでいます。塾経営においても、生徒の成績や家庭環境などの個人情報は、指導を行う上で重要な情報源となります。しかし一方で、情報の取り扱いを誤れば、プライバシー侵害や生徒間の軋轢などのリスクも高くなります。本記事では、個人情報を適切に管理し有効活用するためのポイントをお話しします。

参考記事:「NEWSポストセブン」, 2024年6月16日
URL:https://www.news-postseven.com/archives/20240616_1971091.html?DETAIL

個人情報管理の重要性と課題

教育現場における個人情報の必要性

塾や学校現場では、生徒一人ひとりの学習状況や家庭環境などの情報を適切に把握し、共有することが大切です。個別の課題や特性に応じた指導・支援を行うためには、こうした個人情報が不可欠な情報源となります。しかし一方で、個人情報の取り扱いを誤ると、プライバシー侵害やいじめ、家庭内のトラブルなど、重大な問題を引き起こすリスクがあります。教育現場では、情報の共有による指導の質の向上と、個人情報の厳重な管理の両立が常に課題となっています。

情報漏えいによるリスクと影響

札幌の中学校での事案のように、一旦個人情報が外部に漏れてしまうと、被害は計り知れません。生徒やその家族のプライバシーが傷つけられ、いじめや差別につながる恐れもあります。学校や塾の信頼も大きく失墾し、生徒や保護者からの提訴リスクも高まります。加えて、教育現場で共有されていた生徒の様子や家庭環境などの詳細な情報が流出することで、それらの関係性にも大きな影響が出る可能性があります。一度流出した個人情報を完全に回収することは難しく、二次被害のリスクも高くなります。このように組織が管理する個人情報は、慎重かつ適切に取り扱わなければ、生徒や保護者、そして組織自体に計り知れない損害をもたらす危険性があるのです。

個人情報を適切に共有・管理するための対策

情報の取り扱いルールと教育の徹底

塾でも個人情報保護は欠かせない重要な課題です。まずは、塾生の個人情報の範囲、共有できる情報とできない情報、ファイルの持ち出しや複製のルール、情報の削除ルールなどを明確に定める必要があります。そしてそのルールを文書化し、全スタッフに対して徹底した周知と教育を行わなければなりません。法令順守はもちろん、個人情報漏えいがあれば塾の信頼を失い、生徒が被害を受ける恐れもあるため、ルール遵守は必須です。さらに実地の点検やテストなども行い、ルール理解と実践を常に確認することが大切です。加えて、万が一の事故発生時の対応手順や責任体制も予め整備し、スタッフに周知徹底することが重要となります。

セキュリティ対策と情報システムの構築

個人情報の適切な管理のためには、物理的なセキュリティ対策と情報システムの整備も欠かせません。紙の書類などの物理媒体については、施錠できる保管庫の設置や入室制限、持ち出し制限などの対策が必要です。デジタルデータについては、アクセス権限の適切な設定、パスワードポリシーの策定、ウイルス対策などのセキュリティ対策に加え、バックアップ体制の構築も重要になります。さらに、個人情報を含むデータの一元管理や、ログの一元的な管理・監視ができる専用の情報システムを導入することで、個人情報の取り扱いの可視化と分析、セキュリティインシデントの初期検知や対応が可能となります。個人情報保護のためには、このような総合的なセキュリティ対策と情報システムの整備が欠かせません。

まとめ

生徒の成長のためには、個人の特性に応じた適切な指導が不可欠です。そのためには、生徒の学習状況や家庭環境などの個人情報を把握し、指導に活かす必要があります。しかし一方で、個人情報の取り扱いを誤ればプライバシー侵害などの深刻な事態を招くリスクがあります。塾経営者は、ルール策定と徹底した教育、セキュリティ対策の実施により、個人情報の適切な管理体制を整備しつつ、有効活用できる環境を整える必要があります。情報の重要性とリスクを冷静に見極め、バランスの取れた対応ができるかが、塾経営の鍵となるでしょう。