今年5月、中国教育部と国家語言文字工作委員会は第8回「中華経典誦写講大賽」の開催を通知し、作品制作におけるAI利用ルールを明確化しました。画質改善や背景美化は認める一方、本文・原稿のAI生成は禁止としており、日本の作文・探究発表・動画審査設計にも参考になる実務的な整理といえそうです。
全国規模の公益コンテストでAIの可否
2026年5月28日、中国教育部の政府ポータルで、教育部と国家語言文字工作委員会による「第8回 中華経典誦写講大賽」の開催通知が公表されました。
中国語・古典文化の普及を目的とした全国規模の公益コンテストで、朗読、講解、書写、篆刻の4部門が設けられています。教育現場にとって注目点は、参加作品におけるAI活用の可否をかなり具体的に示したことです。
その大会の概要とは?
大会テーマは「文脈を受け継ぎ、中華を輝かせる」。公式サイト上で募集・作品提出・通知・証明書発行までを一元化し、各地域の教育部門や大学、香港・マカオ・海外地区も含めて実施されます。
部門は4つです。1つ目は朗読の「誦読中国」、2つ目は古典の解説・講話にあたる「詩教中国」、3つ目は書写の「筆墨中国」、4つ目は篆刻の「印記中国」です。初賽・復賽・決賽・交流展示という段階的な運営が想定され、参加者には知識測評も課されます。
また、公益性の高い大会として、参加費の徴収禁止、公開・公平・公正な運営、安全管理、虚偽申告への対応なども明記されました。作品の表記ミスや不正確な学校名の記載まで含め、提出情報の正確性が求められている点も実務的です。
AI利用ルールの核心はどこに
今回の通知で特に重要なのは、AIの利用を全面禁止にも全面解禁にもせず、「補助してよい部分」と「禁止する中核部分」を切り分けていることです。
通知では、著作権を確保し、AI利用を明示したうえで、動画の画質改善や背景美化など、作品の品質向上のためのAI活用は認められるとしています。一方で、作品の独創性・真正性を守るため、応募作品のテキストをAIで生成することは禁止されました。
つまり、表現の外周にある技術的補助は許容しつつ、審査の中心となる知的成果物そのものは本人が作る、という考え方です。これは教育評価における線引きとして非常にわかりやすく、実務に落とし込みやすい設計です。
日本の学校・塾で参考になる点
日本でも、作文、読書感想文、探究発表、プレゼン動画、スピーチ、コンテスト応募などで生成AIの扱いが課題になっています。現場では「AIを使ってよいか」ではなく、「どの工程なら使ってよいか」を定義しないと、指導も審査もぶれやすくなります。
今回の中国の通知は、その整理の一例として有用です。たとえば、構成案の壁打ち、誤字脱字の確認、字幕整形、音声ノイズ除去、画像の明るさ補正などは補助領域として認める一方、主張の本文、朗読原稿、探究の考察、発表の結論、審査対象となる創作部分は本人作成を必須にする、といった運用が考えられます。
特に動画コンテストや探究発表では、AI編集とAI生成が混同されがちです。画質改善や背景処理のような編集補助と、ナレーション原稿や発表内容の自動生成は分けて扱う必要があります。今回の通知は、その区別を制度文書として示した点に意味があります。
ルール整備で押さえたい観点
教育現場でAIルールを作る際は、少なくとも3つの観点が必要です。第一に、学習目標との整合です。評価したいのが読解力・表現力・思考力なら、その中核をAIに代替させない設計が必要です。
第二に、申告の仕組みです。どこでAIを使ったかを事前申告させるだけでも、指導と審査の透明性は高まります。中国の通知でも「明確な表示」が条件になっています。
第三に、著作権と真正性への配慮です。AIで生成した画像・文章・音声を含む場合、権利関係や出典確認が曖昧になりやすいため、学校内ルールや募集要項に具体的な記載欄を設けることが有効です。
💡 先生へのポイント
- 募集要項では「AI可/不可」を一言で済ませず、工程ごとに整理する
- 許可する例として「画質補正・字幕整形・背景美化」などを明記する
- 禁止する例として「作文本文・発表原稿・考察文の自動生成」を示す
- 提出時に「AI使用箇所」の自己申告欄を設ける
- 審査基準にも「本人の思考・表現が確認できるか」を入れる
まとめ
中国教育部の今回の通知は、文化コンテストの開催案内であると同時に、教育現場向けの実務的なAI利用ルールの例でもあります。日本でも、作文や探究、動画制作の評価において、AI補助を認める部分と本人作成を求める中核部分を分けて示すことが、今後ますます重要になりそうです。
出典:教育部 国家语委关于举办第八届中华经典诵写讲大赛的通知 - 中华人民共和国教育部政府门户网站 http://www.moe.gov.cn/srcsite/A18/s3137/202605/t20260528_1437956.html?utm_source=chatgpt.com




