京都芸術大と大学発DX企業が、学生の思考プロセスに寄り添う伴走型AI「Neighbuddy」を共同開発し、今年度から6学科・コースで授業運用を開始しました。地域発の教育DXとして注目される取り組みであり、中学・高校でも「答えを得るAI」から「問いを深めるAI」への授業設計を考えるヒントになります。
京都発の「伴走型AI」という教育DX
京都芸術大学(京都府京都市)は、学内発のDX推進組織である株式会社クロステック・マネジメント(同)と共同で、伴走型AI「Neighbuddy(ネイバディ)」を開発し、2026年度から6つの学科・コースで授業運用を始めました。
2024年秋からのパイロット運用で得た知見をもとに改良を進め、生成AIを単なる回答生成ツールではなく、学生の思考に寄り添う学習パートナーとして位置づけている点が特徴です。
この動きは、大学単体の新サービス導入にとどまりません。京都という地域に根ざした大学と大学発企業が連携し、教育現場の課題を起点にAI活用モデルを設計している点で、地域発の教育イノベーションとして見る価値があります。
「答えに早くたどり着く」学びを問い直す
生成AIの普及で、学習者は完成度の高い答えにすぐアクセスできるようになりました。一方で、考える前に答えを見てしまうことで、自分で問いを立てたり、試行錯誤したりする過程が弱まりやすいという課題もあります。
同AIはこの状況に対し、「正解を返すAI」ではなく、「なぜそう考えるのか」「他にどんな視点があるのか」を問い返すAIとして設計されています。特に芸術教育では、成果物そのものだけでなく、そこに至る発想や思考のプロセスが重要です。今回の実装は、AI時代において学びの中心をどこに置くかを再設計する試みといえます。
「個人の文脈」と「思考の可視化」
この伴走型AIは、シラバス、学習履歴、学生の関心領域などを踏まえて対話を行い、一人ひとりに応じた問いかけを行います。単に情報を提示するのではなく、学習者が自分の考えを掘り下げるための対話設計が組み込まれていることが大きな特徴です。
加えて、AIとの対話ログを通じて、学生がどのように考えを深めたかを可視化できるため、教員は提出物の完成度だけでなく、その背景にある試行錯誤や関心の変化も把握しやすくなります。これは評価のあり方にも影響しうる視点で、プロセス評価や探究学習との親和性が高い取り組みです。
さらに、自学自習を支えるインフラとしての役割や、興味関心の拡張、内発的動機を促すメッセージ機能も備えており、授業外学習まで含めた学習設計が意識されています。
地域と教育の接点としての意義
京都芸術大学は、企業や自治体の課題に学生が取り組む「社会実装プロジェクト」を年間100件以上展開しており、地域や社会と接続した学びを重視してきました。今回のAI開発も、そうした土壌の上にある取り組みです。
地域の大学が自前で教育AIの設計・運用に踏み込み、大学発企業とともに実装まで進めることは、地域内で教育ノウハウとDX人材を循環させるモデルにもなります。今後、自治体・学校・地域企業が連携する探究学習やPBLの場面で、こうした伴走型AIの考え方が広がれば、地域課題に向き合う学びの質を高める可能性があります。
「AI利用」より授業設計へ
この事例は大学の取り組みですが、中学校・高校の学校教育にも示唆があるはずです。特に総合的な学習・探究の時間、課題研究、表現活動、小論文指導では、AIを使うこと自体よりも、問いの立て方や思考過程の記録をどう支えるかが重要になります。
中高で生成AIを導入する際、答えをそのまま得る使い方に偏ると、学習の主体性や思考の深まりを損なう懸念があります。一方で、問い返し、観点の追加、振り返りの促進といった役割に限定・設計すれば、教員の伴走を補完する手段になりえます。
また、対話ログを活用して思考の変化を追える仕組みは、探究の評価、ポートフォリオ作成、進路指導にも応用可能です。中高では情報モラルや利用ルールの整備が前提になりますが、「AIに何を任せ、何を生徒自身に考えさせるか」を明確にすることが、今後の実装の鍵になるでしょう。
💡 先生へのポイント
- 生成AI導入の目的を「時短」だけでなく「問いを深める支援」に置く
- 探究学習では、最終成果物に加えて思考ログや対話履歴も評価材料にする
- 中高で使う場合は、回答生成よりも壁打ち・視点追加・振り返り支援に役割を絞る
- 地域課題学習やPBLでは、AIを生徒の発想整理役として使う設計が有効
- 校内導入時は、教科横断で活用ルールと評価観点をそろえると運用しやすい
まとめ
今回の取り組みは、生成AIを「答えを出す装置」ではなく「思考に伴走する存在」として授業に組み込んだ先進事例です。地域発の教育DXとしても意義が大きく、中学・高校にとっても、AI時代の探究・評価・授業設計を見直す具体的なヒントを与える取り組みといえます。
出典:【AIを自律的学習のパートナーへ 】京都芸術大学と大学発DX企業クロステック・マネジメント、伴走型AI『Neighbuddy』を共同開発。学生の思考プロセスに伴走する新しい学習モデルを授業実装 | 学校法人 瓜生山学園 京都芸術大学のプレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000685.000026069.html




