教育現場で生成AIの活用が広がっています。塾経営者の皆さんは、この新しいツールをどう捉えていますか?生徒への効果的な指導法と、校務負担の軽減につながる使い方を、先進的な学校の実例からご紹介します。塾の授業と事務作業がよりスムーズになる可能性に気づけるはずです。
参考記事:「教育とICT Oneline」, 2024年5月31日
URL:https://project.nikkeibp.co.jp/pc/atcl/19/06/21/00003/052500542/
生成AIを使えば授業がこう変わる!
生徒とAIが協力してグループ学習を深める方法
生成AIは生徒のグループ学習をより深く、多角的なものにするための強力なツールとなります。茨城県つくば市の学園の森義務教育学校では、国語の授業でリンクマップ作成とグループ討議の際に生成AIを活用していました。生徒たちが議論していく中で、意見が行き詰まったタイミングで生成AIにアドバイスを求めると、生徒の視点とは異なる新しい情報や見方を提示してくれます。生徒はそれをヒントに議論を発展させ、リンクマップに取り入れていくのです。議論が単に行き詰まるのを防ぐだけでなく、多様な視点が加わることで、より深い探究や理解につながります。まるで、ディスカッションに参加するメンバーが増えたかのように感じさせてくれます。
英会話に、多様な役割を演じるAIを活用
英語の授業では、生成AIとプログラミングを組み合わせた斬新な取り組みが行われていました。つくば市の学校では、プログラムされたグラフィックスのロボットと生徒がディベートを行う授業を実践。生成AI「ChatGPT」の機能を使ってロボットが英会話でき、役割設定によって応答の仕方を変えられるのです。例えば、ロボットを「若い米国人」に設定すれば、異なる文化的背景の発話ができます。ディベートでは生徒が賛成側、ロボットが反対側の立場を取り、活発な議論が展開されます。このように生成AIに様々な役割を与えることで、生徒は多様な相手との英会話練習ができ、プロンプトの使い分けによる生成AIの応答の違いを体感できるのです。
生成AIは校務の強力なパートナー
業務の効率化に生成AIで革命的な進展
校務での生成AI活用は、教職員の業務を大幅に効率化することができます。愛知県春日井市の藤山台中学校では、ChatGPTやGoogleのGeminiなどのAIツールを、アンケート集計、研修資料作成、調査書の校正、表計算の関数入力補助など、多岐にわたって使用しています。特に資料作成では、「内容を考えるのに時間がかかっていたが、AIのおかげでかなり短縮できた」と、業務負担の大幅な軽減効果が現れたそうです。また、一部のパイロット校では保護者向けの「生成AI利用同意書」までをAIに作成させており、ますます多様な活用が進んでいます。このように、生成AIを校務の様々な場面で活用することで、教職員の作業時間が大きく節約できます。
学校現場で校務での生成AI活用が進む中、塾経営にもさまざまな活用の可能性があります。例えば、授業の教案作成や生徒理解度の確認テストの出題、宿題添削までをAIにアシストしてもらえば業務負担が大幅に軽減できるでしょう。AIに課題演習問題を自動生成させれば、効率的に作問できます。さらに集団授業の際に、生徒からの質問に対して瞬時に的確な回答ができるAIがあれば、講師の説明がスムーズになります。塾経営においても、生徒募集の広告文やDM文の作成、ホームページコンテンツ制作などの業務に役立つはずです。
生成AIを活用した資料作成や文書校正の実例
生成AIは校務の課題解決をサポートするだけでなく、資料作成や文書作業の質を大きく向上させる可能性があります。東京都の千代田区立九段中等教育学校では、情報科の授業でWebサイト制作に生成AIを取り入れています。生徒たちはテキスト生成AIでアイデアを出したり、文章を書いたりする際に利用。また画像生成AIを使って、サイトのビジュアル素材を作成しました。生徒からは「自分ではなかった新しいアイデアが得られた」という声が上がったそうです。主幹教諭の須藤祥代氏は「生徒は作業が楽になったというよりも、異なる視点から助言が得られ、作業効率が上がったことで、より深く思考する時間ができたことがポジティブな評価につながっている」と分析しています。確かに、生成AIはアイデア出しの際に、まるで新たな仲間がいるかのようにサポートしてくれます。行き詰まったら生成AIに助言を求め、抜け出す一助とすることもできるでしょう。
生成AIは資料やWebコンテンツの質の向上にも一役買うことが期待できます。京都市立美術工芸高校では、意見広告の制作に画像生成AIを使いましたが、美術科の西川俊三教諭は「作品の背景となる社会情報の収集・まとめにも活用した方がよかった」と振り返っています。生成AIの可能性は多岐にわたり、まだ試行錯誤の段階ですが、ノウハウが蓄積されていけば、校務での活躍がより広がるはずです。
生成AIは、高品質な授業コンテンツを短時間で作成することにも貢献できます。例えば、教材テキストやプリントの文章をAIに生成させれば、水準の高い教材が短時間で揃えられます。さらに画像生成AIで視覚資料を自動作成すれば、分かりやすい授業資料が手軽にできあがります。塾の授業と生徒対応の両面で、生成AIの活用は教育の質を大きく高めるはずです。
まとめ
昨今、急速に進化を遂げる生成AIは、教育の現場にも大きなインパクトを与えつつあります。文部科学省が選定したパイロット校の取り組みからは、授業と校務の両面で有効活用できることが実証されています。生徒の学びを豊かにしつつ、教職員の負担を大幅に軽減できる可能性を秘めているのです。塾経営者の皆さんも、この新しいツールの力を理解し、上手に取り入れることで、教育の質と経営効率の両立が期待できるはずです。生成AIとの協働による新時代の教育スタイルを、どうぞ前向きに検討してみてください。