この度、近畿大学情報学部が2027年度の総合型選抜で、自己PR動画やプレゼン準備における生成AI利用方針を明示しました。高校・大学の入試設計や探究指導に関わる教員にとって、AI活用を評価にどう位置づけるかを考える参考事例です。
評価の中心は「AIを使ったか」→「どう考えたか」
近畿大学情報学部(大阪府東大阪市)は2026年7月、2027年度の総合型選抜において、自己PR動画の制作やプレゼンテーション準備での生成AI活用を認める方針を示しました。対象となるのは、アイデア出し、構成検討、スライド作成などの準備段階です。受験生は、AIをどう使ったかだけでなく、その過程での工夫や学びも自己PRに反映できます。
今回の方針で重要なのは、生成AIの利用自体を評価するのではなく、受験生本人の能力、思考、独自性を重視すると明言している点です。大学側は、AIを単なる自動化ツールではなく、思考を深めてアイデアを具体化するための「協働パートナー」として主体的に使いこなす力を見ています。
一方で、生成AIを利用しない受験生が不利益を受けないよう、利用環境の違いにも配慮するとしています。AI利用の有無で線を引くのではなく、表現の過程や課題への向き合い方を見る設計であることがうかがえます。
背景にある高校生の実態と大学での学びの接続
方針明示の背景には、高校生から「入試で生成AIを活用したシステム開発経験を示してよいか」といった問い合わせが寄せられていたことがあります。すでに高校段階でAIを使った制作や開発に取り組む生徒が増える中、大学側が曖昧さを残さずルールを示した形です。
同大同学部では、授業でも生成AIを活用した演習を取り入れており、新入生向けの「プログラミングBootCamp」ではAIを活用したアプリ開発にも取り組んでいるとのことです。つまり今回の入試方針は、入学後の教育内容と整合したメッセージでもあります。入試だけでAI活用を話題にするのではなく、学部が育てたい力と接続している点は注目に値します。
総合型選抜の実務にも影響する可能性
同学部の総合型選抜は、情報分野への強い関心や能力、プログラミング経験、デジタル化された未来の課題への提案意欲を持つ受験生を対象としています。募集人員は30人以内で、第1次審査では志望理由書、活動報告書、自己PR動画などを評価し、第2次審査ではプレゼンテーション、口頭試問、出願書類を総合して選考します。第2次審査はオンラインで実施予定です。
この設計を見ると、完成物の見栄えだけでなく、口頭試問を通じて本人の理解や思考の深さを確かめやすい構成になっています。生成AIの利用を認めつつも、対話的な評価を組み合わせることで、本人性や独自性を担保しようとする方向性は、他大学や高校の探究評価にも示唆を与えそうです。
学校現場が考えたい「AI活用の見せ方」
高校や塾の現場では、AIを使った成果物をどう指導し、どう記録させるかが今後さらに重要になります。今回の事例では、成果物そのものよりも、何を考え、どこでAIを使い、どのように試行錯誤したかが自己PRの材料になります。
そのため、探究活動や課題研究、情報科の制作活動では、プロンプトの工夫、AIの出力をどう検証したか、どこを自分で修正したかを言語化する指導が有効です。AI利用の可否を一律に論じるより、学習者が主体的に使い、説明責任を果たせるかを育てることが、進路指導と学習指導の両面で求められます。
💡 先生へのポイント
- 生徒の成果物だけでなく、制作過程や試行錯誤の記録を残させる
- 「AIに何を任せ、何を自分で判断したか」を振り返らせる
- 面接や発表練習では、AI活用の意図と検証方法を自分の言葉で説明できるようにする
- 総合型選抜対策では、完成度よりも本人の関心・工夫・学びの言語化を重視する
まとめ
今回の近畿大学情報学部の方針は、生成AIを禁止か容認かで単純に分けるのではなく、学びの過程と本人の思考をどう評価するかに踏み込んだ事例です。入試、探究、情報教育をつなぐ観点から、学校現場でもAI活用の記録・説明・検証をセットで指導する重要性が高まりそうです。
出典:近畿大学情報学部が総合型選抜での生成AI利用方針を明示 自己PRやプレゼンテーション準備に生成AIの活用を認める | 学校法人近畿大学 https://www.atpress.ne.jp/news/9177205




