この度の教職員328名調査から、生徒の生成AI活用が広がる一方、学びの深まりを左右するのは「プロンプト設計力」だとする見方が鮮明になりました。現場で進む格差拡大や教員業務の変化を踏まえ、学校が今整えるべき指導と運用の視点を整理してみましょう。
生徒のAI活用は「一部の先進事例」から日常へ
アルサーガパートナーズ株式会社(東京都渋谷区)が全国の教職員328名を対象に行った2026年7月発表の調査では、学校側が生徒の生成AI利用を「公式に許可している」との回答が53.7%に達しました。さらに、許可されている学校では実際に約7割の生徒が活用しているとされ、生成AIが学習現場で急速に身近な存在になっていることがうかがえます。
もはや生成AIは、特定のICT先進校だけの話ではありません。利用可否の判断に加え、どの場面で、どの目的で、どのようなルールのもと使うかという設計が、学校運営の実務課題になりつつあります。
学びの深まりを分けるのは「プロンプト設計力」
注目されるのは、教員の72.3%が「プロンプトが上手な生徒ほど、学びが深まったり新しい気づきを得たりしている」と感じている点です。ここでいうプロンプト設計力は、単なるAI操作の巧拙ではなく、問いを具体化し、条件を整理し、回答を比較しながら思考を進める力に近いものです。
生成AIを使うと、同じテーマでも投げかけ方によって返ってくる情報の質が大きく変わります。そのため、AI活用は一律に学習効果を高めるのではなく、生徒の問いの立て方や言語化の力を増幅する側面が強いといえます。学校にとっては、AIリテラシー教育を「便利な使い方」ではなく、「考えるための聞き方・確かめ方」の指導へ広げる必要がありそうです。
一方では学力や提出物の「質の格差」広がる現実
その反面、51.2%の教員が、生成AIの活用によって生徒の学力や提出物の質の格差が広がったと回答しました。AIを使いこなせる生徒は短時間で質の高い下書きや視点を得られる一方、使い方が浅い生徒は表面的な回答にとどまりやすく、差が見えやすくなっていると考えられます。
特に提出物では、見た目が整った文章ほど評価が難しくなる場面もあります。完成品だけを見る評価では、思考過程や試行錯誤が見えにくくなり、結果として「AIをうまく使えたか」が成績に影響する懸念もあります。今後は、成果物評価だけでなく、プロンプトの工夫、修正の履歴、根拠の確認といった過程評価をどう組み込むかが重要になりそうです。
教員業務は軽くなるだけでなく質的に変化
今回の調査では、教員が最も時間を取られている業務として「AIの使い方や指導法を自習・研究する時間」が35.1%で最多でした。続いて、「提出物がAIの丸写しでないかチェックする作業」と「AIの回答が正しいか確認する作業」がともに32.4%、「AIで簡単に解けないよう課題を作る作業」が23.0%となっています。
生成AIは教員の負担軽減に資する面がある一方で、現場では新しい確認業務や課題設計の見直しを生んでいます。つまり、業務が単純に減るのではなく、指導・評価・課題作成の中身が再設計を迫られている段階です。校内で個人任せにせず、評価基準や利用ルール、確認方法を共有する体制づくりが欠かせません。
現場の要望は積極導入よりも安全で効果的な運用
今後の生成AI活用については、「補助的なツールとして限定的に利用すべき」33.8%、「課題を解決しながら慎重に導入を進めるべき」32.6%が上位を占めました。「導入すべきではない」は5.2%にとどまり、慎重派は多いものの、AIそのものを否定しているわけではないことが分かります。
現場が求めているのは、全面導入か全面禁止かという二択ではなく、学習効果と公平性、安心安全を両立する運用です。特に、入力データの扱い、校務・学習での利用範囲、著作権や個人情報への配慮、評価方法の見直しなど、制度面の整備が導入の成否を左右します。
💡 先生へのポイント
- AI活用指導は「使い方」より先に「何を確かめたいか」を言語化させる
- 提出物は完成品だけでなく、プロンプト例や修正過程も提出対象にする
- 課題は要約だけで終わらず、比較・批判・具体化を求める設計にする
- 校内で利用ルールと評価観点を共有し、教員ごとの差を減らす
- ファクトチェックの手順を授業内で明示し、AI回答をそのまま信じない習慣を育てる
まとめ
今回の調査は、生成AIが生徒の学びを深める可能性を持つ一方、その効果がプロンプト設計力に大きく左右されることを示しました。同時に、学力や提出物の質の格差、教員の確認業務の増加といった新たな課題も明確になっています。
これからの学校に求められるのは、AI利用の可否を決めることだけではなく、思考を深める使い方をどう教え、どう評価するかを設計することだといえそうです。
出典:【生成AI活用実態調査2026】教員の約7割が生徒の「プロンプト設計力」による学びの深まりを実感。一方で、学力や提出物の質の格差拡大が課題 | アルサーガパートナーズ株式会社のプレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000354.000028308.html




