今年6月25日の文科省の情報・技術ワーキンググループ配付資料から、次期学習指導要領に向けた情報教育の骨子案が示されました。小中高を通じた体系整理と、高校卒業段階での数理・データサイエンス・AI活用の到達像を、学校現場の実務目線で整理します。
2040年代を見据えた情報教育の再設計
文部科学省が公表した中央教育審議会・情報・技術ワーキンググループ第11回(2026年6月25日)の配付資料では、次期学習指導要領の議論に向けて、情報教育の取りまとめ案が具体化しました。焦点は、次期学習指導要領の下で学んだ子どもたちが社会で中核を担い始める2040年代を見据え、情報活用能力を「一部の得意な生徒の力」ではなく、全員に保障すべき基盤的資質として再定義している点です。
資料2では、AIやロボットの普及、雇用構造の変化、労働市場の流動化、偽・誤情報の拡散による社会の分断といった将来像を前提に、学校教育で育てるべき姿を整理しています。単なる端末操作やプログラミング体験にとどまらず、情報を読み解き、判断し、活用し、社会参加につなげる力まで含めて構想しているのが特徴です。
育成を目指す4つの人物像
配付資料で示された柱は、2040年代の社会を支える4つの人物像です。第一に、情報を見極めて健全な民主主義を支える「主権者」。第二に、自ら問いを立て、多様な情報を収集・整理・分析する「アクティブラーナー」。第三に、スキルを駆使して経済の維持・発展を担う「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」。第四に、社会の革新を生み出す「イノベーター」です。
重要なのは、これらが一部の専門人材だけを対象にした像ではないことです。情報教育は、将来IT分野に進む生徒のためだけでなく、どの進路でも必要となる市民性、学び方、職業基礎力、創造性を横断的に育てるものとして位置づけられています。
小中高を通じた体系化が進む
資料1では、「情報の領域(仮称)」「情報・技術科(仮称)」「情報科」の体系整理が続けて示されました。小学校では総合的な学習の時間に「情報の領域(仮称)」を設ける方向、中学校では現行の技術・家庭科の技術分野を独立させて「情報・技術科(仮称)」へ改編する方向が確認されています。
これにより、高校の情報科だけに負担を集中させるのではなく、小学校段階から情報との向き合い方を育て、中学校で技術的・実践的な学びへつなぎ、高校で数理・データサイエンス・AI活用まで発展させる流れが見えやすくなりました。情報教育を「単発の教科」ではなく、発達段階に応じて積み上げる設計へ移す意図がうかがえます。
「AIを使いこなす」高校卒業時の到達像
今回の骨子案で特に注目されるのは、高校を卒業した全員が、数理・データサイエンス・AIを日常生活や仕事の場面で使いこなせるレベルの学習を保障する枠組みを構築するとした点です。
ここでいう「使いこなす」は、単に生成AIに触れることではありません。目的に応じて適切に活用し、出力をうのみにせず検証し、課題解決や意思決定に生かす力まで含むと読むべきでしょう。学校現場では、情報科単独で完結させるより、探究、教科横断学習、進路指導、校務DXと結びつけて実装する視点が重要になります。
参考資料1の高等学校学習指導要領実施状況調査(情報Ⅰ・暫定版)も、現場の実施状況を把握しながら制度設計を進める流れを補強しています。今後は、授業時数、教員養成、評価方法、設備格差への対応が実装上の論点になりそうです。
学校・自治体が今から備えたい論点
今回の資料は最終決定ではないものの、方向性はかなり明確です。学校にとっては、情報教育を担当教員だけのテーマにせず、管理職、教務、ICT担当、各教科主任が共通認識を持つ必要があります。
特に検討したいのは、教科横断で情報活用能力をどう位置づけるか、生成AIやデータ活用を含む授業設計をどう段階化するか、そして評価を知識偏重ではなく「問いを立てる力」「情報を吟味する力」「活用して表現する力」まで広げられるかです。中学校の教科再編や小学校での領域新設が進めば、接続カリキュラムの整備も急務になります。
💡 先生へのポイント
- 情報教育を「情報科の仕事」と限定せず、探究・総合・各教科での役割分担を整理する
- 生成AI活用は、便利さだけでなく検証・出典確認・倫理までセットで扱う
- 小中高接続を意識し、学年ごとの到達目標を校内で見える化する
- 端末活用の頻度ではなく、情報を集めて比較し、判断に使う学習場面を増やす
まとめ
今回の文科省の配付資料からは、次期学習指導要領で情報教育を抜本的に強化し、高校卒業時点で全員にAI活用を含む情報活用能力を保障しようとする方針が鮮明になりました。今後は制度化の詳細を追うと同時に、学校現場では教科横断の設計と教員体制づくりを先行して進めることが重要です。
出典:教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ(第11回)配付資料:文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/118/mext_00009.html




