この度、デジタル・ナレッジ社による調査で、小中高の教員の約9割が生成AI活用の効果を実感していることが分かりました。校務・授業準備での定着が進む一方、学校単位のルール整備や研修が活用の質を左右する点は、導入を進める学校にとって重要な示唆となるはずです。
校務と授業準備でAI活用が着実に浸透
株式会社デジタル・ナレッジ(東京都台東区)が運営するeラーニング戦略研究所の2026年6月に公表した調査報告書によると、小中高の教員の生成AI活用は、まず校務と授業準備の領域で広がっています。校務での利用率は84.2%、授業準備での利用率は74.4%に達し、特に「会議・報告資料作成」「行事・イベントの企画作成」「連絡文書・お知らせ作成」、そして授業準備では「教材作成」での活用が目立ちました。
教員の約9割がAI活用の効果を実感している点は注目に値します。AIが教育現場で万能というわけではないものの、日々の業務負担を軽減し、準備時間を圧縮する実務ツールとして一定の有用性を持ち始めていることがうかがえます。
効果実感の一方で運用面の整備には学校差
活用が進む一方で、学校内の体制整備にはばらつきがあります。調査では「ルール・ガイドラインが未整備」「指導方法がわからない」といった声が多く、教員研修の有無にも差が見られました。
これは、個々の教員が自発的に使い始めている段階から、学校として安全かつ継続的に活用する段階へ移る際の典型的な課題です。生成AIは便利さゆえに現場先行で広がりやすい一方、情報管理、著作権、個人情報、出力の正確性確認など、共通ルールがなければ運用リスクが高まります。導入の成否は、ツール選定そのものよりも、むしろ校内の合意形成と支援体制に左右されると言えそうです。
生徒利用は拡大傾向~期待と不安が併存
生徒によるAI利用については、「授業で利用させたことがある」が18.8%、「自主利用を把握している」が25.6%、「自主利用の可能性はあるが把握していない」が33.8%でした。すでに学校管理下・管理外の両面で利用が広がりつつある状況です。
用途は「調べ学習」「発表資料作成」「探究学習」が中心で、学びの補助としての期待は小さくありません。一方で、教員側には思考力低下や依存への懸念があり、自由記述では「AI利用かどうか判別が難しい」「情報の正確性や精度が不安」といった指摘も見られました。
この結果は、AI利用を禁止か容認かの二択で考えるのではなく、どの場面で、どこまで、どのように使わせるかを具体化する必要性を示しています。特に評価方法やプロセス確認の設計は、今後の授業実践で重要な論点になりそうです。
活用成熟度が高い学校ほど有用性評価も高い
今回の調査の特徴は、単純な利用率ではなく「AI活用成熟度」に着目している点です。成熟度は「校務利用」「授業準備利用」「ルール整備」「推奨・契約ツール」「教員研修」の5項目から4段階で分類されました。
分析の結果、AI活用成熟度が高い学校ほど、効果実感と有用性評価が高い傾向が確認されました。また、懸念内容も初期段階の「学力低下」から、活用が進んだ段階では「運用・管理」へと移っていくことが示されています。
これは、AI活用が進むほど不安が消えるというより、課題の質が変わることを意味します。導入初期は教育的影響への抽象的な不安が中心でも、定着段階ではルール運用、研修、基盤連携、安全管理といった実装課題が前面に出てきます。学校として一段上の活用に進むには、現場の成功体験を制度設計につなげる視点が欠かせません。
LMS連携や研修設計が次の論点に
また報告書では、今後の支援策として、教員研修や活用事例共有に加え、LMS連携を含む学習基盤との接続や安全な利用環境整備の重要性を挙げています。単発の研修や個人スキルに依存する運用ではなく、学内インフラの一部としてAIを位置づける発想が求められています。
特に学校・自治体・塾など教育機関の担当者にとっては、AIツール導入そのものよりも、利用場面の整理、校内ガイドライン、研修設計、ログ管理や既存システム連携までを含めた全体設計が鍵になります。生成AI活用は、教育DXの一機能として捉えることが現実的です。
💡 先生へのポイント
- まずは「会議資料」「連絡文書」「教材たたき台」など、効果が見えやすい用途から始める
- 生徒利用は全面許可・全面禁止ではなく、目的と範囲を明示して設計する
- 校内でプロンプト例、注意事項、確認手順を共有すると属人化を防ぎやすい
- 評価では成果物だけでなく、調査過程や思考プロセスの確認方法も検討したい
まとめ
今回の調査は、生成AIが小中高の現場で実務的な効果を持ち始めていることを示しました。同時に、活用の質を高めるには、学校単位でのルール整備、研修、基盤連携が不可欠であることも明らかです。
AI導入の成否は、使うかどうかよりも、どう運用し、どう学びに結びつけるかにかかっています。
出典:《小中高のAI活用実態調査》教員の約9割が効果実感。“AI活用成熟度”が高い学校ほど有用性評価も高い結果に | 株式会社デジタル・ナレッジのプレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001416.000012383.html




