東京都教育委員会が、都立学校の中高生向けに「都立学校AI Lab」を始動します。生成AIの活用を“使う”段階から“課題解決のプロダクトを作る”段階へ進める取り組みとして、学校現場の探究・情報教育の参考になります。
AI技術を使って課題解決に挑む
東京都教育委員会は、都立学校の生徒を対象に、生成AIなどのデジタル技術を使って社会や地域の課題解決に挑むプロジェクト「都立学校AI Lab」を開始すると、2026年6月12日に公式ホームページ上で発表しました。昨年5月に全都立学校で整備した生成AI利用環境「都立AI」を土台に、今後は生徒がAIを活用して実際にアプリやプロダクトを作る段階へ学びを発展させていく構想です。
「使うAI」から「作るAI」へ
今回の発表では、都立学校におけるデジタル・AX人材育成を重層的に進める方針が示されました。既存の「都立AI」は、生成AIと対話しながら新しい視点や発想を得るための活用環境です。一方で「都立学校AI Lab」は、生成AI等を活用して社会や地域の課題を解決するプロダクトづくりに取り組む実践型プログラムとして位置付けられています。
単なるツール利用にとどまらず、課題設定、アイデア創出、開発、発表までを含む学習設計になっている点が特徴です。情報活用能力に加え、探究、協働、デザイン思考、データサイエンスの要素を横断的に扱う取り組みとして注目されます。
レベル別の3段階プログラム
「都立学校AI Lab」では、生徒の経験や習熟度に応じて3段階のプログラムが用意されます。
初級の「アプリ開発オンラインプログラム」は、AIアプリ開発の基礎を動画教材で学ぶ内容で、令和8年7月から令和9年3月まで配信予定です。対象は、アイデアを形にする第一歩を踏み出したい都立学校の中学生・高校生です。
中級の「アプリ開発ワークショップ」は、基礎から実践へ進みたい生徒向けです。集合型では、デザイン思考の学習が7月12日と8月2日、AIアプリの知識習得と開発が7月18日、8月3日、8月4日に予定されています。学校開催型は都立学校8校で9月から12月に実施予定です。集合型の定員は計150名で、募集は6月12日から始まっています。
上級の「ハッカソン・コース」は、高度な課題解決に挑戦したい高校生向けで、定員は40名。令和8年9月から令和9年1月まで、デザイン思考、データサイエンス、AIアプリ開発を学びながら、メンターの伴走支援を受けて開発を進めます。1月下旬には成果発表、審査、表彰も予定されています。
民間連携と実践重視の設計
中級ワークショップの集合型会場には、デロイト トーマツ グループ東京オフィスが予定されています。行政主導でありながら、外部の知見や実践環境を取り込む設計は、学校内だけでは得にくい開発体験や社会接続の機会を生徒にもたらしそうです。
また、上級コースではメンターが伴走するため、単発のイベントで終わらず、継続的に試行錯誤する学びが想定されます。AI活用を「便利な道具」として終わらせず、課題解決のプロセスにどう組み込むかを学べる点は、今後の情報教育や探究学習のモデルケースになり得ます。
学校現場への示唆
この取り組みは都立学校向けですが、他自治体や私学、塾にとっても示唆があります。特に参考になるのは、AI活用を一斉導入だけで終わらせず、初級・中級・上級の段階設計で学びを積み上げている点です。
学校現場では、生成AIの利用ルール整備や体験機会の提供にとどまりがちです。しかし、本件のように「地域や社会の課題をどう定義するか」「どのようなアプリや仕組みなら解決に近づくか」まで扱うことで、探究学習やPBLとの接続がしやすくなります。中学生から参加できる中級プログラムがあることも、早い段階から創造的なデジタル活用へ接続する設計として参考になります。
💡 先生へのポイント
- 生成AI活用を「調べる・書く」だけでなく、「課題を見つけて作る」学びへ広げる視点が重要です。
- 情報科、総合的な探究の時間、部活動、課外講座をつなげると実践しやすくなります。
- 初学者向けの動画教材、中級の短期ワークショップ、上級の伴走型開発という段階設計は校内企画にも応用できます。
- 生徒募集型の外部プログラムを活用する際は、参加後の校内発表や成果共有まで設計すると学びが広がります。
まとめ
今回の東京都の「都立学校AI Lab」は、生成AIの利用環境整備を一歩進め、生徒が社会課題の解決に向けて実際に開発へ挑む実践型プログラム。AI時代の探究学習や情報教育を考えるうえで、段階的な育成設計と外部連携のあり方に注目したい取り組みです。
出典:デジタル・AX人材を育成する「都立学校AI Lab」がスタート! ~都立学校の生徒がデジタル技術を活用して社会の課題解決に挑戦~|6月|東京都教育委員会 https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/06/2026061201




