この度、愛媛県が県内高校生を対象にAIで地域課題の解決に挑む年間プログラム「えひめAI部」を開始します。学校現場にとっては、探究・情報教育・地域連携を横断して設計された実践モデルとして大変参考になる取り組みでしょう。
高校生がAIで地域課題に挑む新たな県事業
愛媛県は2026年6月9日の報道発表によると、えひめ発課題解決型AI人材育成事業の一環として、県内高校生がAIを活用して課題解決に取り組む「えひめAI部」を創設しました。目的は、AIを使って県内の課題解決に関われる人材の裾野を広げることです。今年度の令和8年度はモデル校3校でスタートし、計70人の参加申し込みがあり、6月16日にオンラインでキックオフミーティングを実施します。
参加校は、小松高等学校34人、伊予高等学校20人、宇和島南中等教育学校16人。学校単位で活動しながら、他校との交流も組み込まれている点が特徴です。
年間通じて「学ぶ・作る・発表する」を循環
プログラムは単発イベントではなく、年間を通じて段階的に学びを深める構成です。6月からはオンラインのオンデマンド講座で、生成AIの使い方といった基礎から、AIアルゴリズム、Pythonプログラミングを用いたデータ活用まで、各自のレベルに応じて学習します。
その後、8月と10月頃には対面ワークショップを予定。AI活用のアイデア出しからプロダクト化までを体験し、参加校同士で切磋琢磨できる設計です。さらに8月頃には、県内でAIを活用している企業を訪問し、実社会での活用事例に触れる機会も設けられています。
7月から来年1月頃にかけては、県内企業の社員や大学生などの支援を受けながら、AIを活用したアプリのプロトタイプ制作に取り組みます。最終的には1月頃の成果発表会で制作物を発表し、最優秀校は3月開催予定の「AI甲子園 in やまがた」への出場を目指します。
学校現場が注目したい3つの設計ポイント
教育的に見ると、この取り組みには3つの示唆があります。
1つ目は、AI活用を「操作スキル習得」で終わらせず、地域課題の解決という探究テーマに接続していることです。生成AIの使い方だけでなく、データ活用やアプリ試作まで含めることで、学習内容が実践に結びつきやすくなっています。
2つ目は、学校外の伴走者を組み込んでいることです。県内企業のデジタル人材や情報系大学生が関わることで、教員だけでは補いにくい専門性や、社会との接点を生徒に提供できます。探究学習で課題になりやすい「問いの具体化」や「試作品の実装支援」にも有効です。
3つ目は、学校単位の活動と他校交流を両立している点です。校内で継続的に取り組みつつ、ワークショップや発表会で外部刺激を得られるため、学習のモチベーション維持にもつながります。
情報教育・探究・地域連携の接点として活用余地
「えひめAI部」は、情報I・情報IIの発展的学習、総合的な探究の時間、地域協働学習の接点に位置づけやすい事例です。特に、生成AIの基礎理解、Pythonを使ったデータ活用、課題発見から試作・発表までの流れが一体化しているため、部活動・課外活動としてだけでなく、学校全体のカリキュラム設計を考えるうえでも参考になります。
また、地域企業訪問や外部人材の伴走は、キャリア教育の観点でも意義があります。生徒が「AIを学ぶ」だけでなく、「地域でAIをどう使うか」を考える経験は、地元産業や将来の進路への理解を深めるきっかけになりそうです。
💡 先生へのポイント
- 生成AI活用を授業内で完結させず、地域課題や探究テーマに接続すると学習の意味づけがしやすくなります。
- 校内に専門人材が少ない場合は、企業・大学・自治体との連携を前提に設計すると実践しやすくなります。
- 成果物を「レポート」だけでなく、アプリ試作や発表会まで見据えると、生徒の主体性を引き出しやすくなります。
- 他校交流の機会を入れることで、探究活動の質と継続意欲の両方を高めやすくなります。
まとめ
今回の愛媛県の「えひめAI部」は、高校生がAIを使って地域課題の解決に挑む年間型プログラムとして始動します。基礎学習、企業連携、伴走支援、試作、発表までを一貫させた設計は、これからの探究学習や情報教育のモデルケースとして注目されることでしょう。
出典:えひめAI部について - 愛媛県庁公式ホームページ https://www.pref.ehime.jp/page/149496.html




